顎変形症と診断される際、手術が必要かどうかボーダーラインぎりぎりのケースがあります。この場合、患者様ご自身の意思によって手術を受けるかどうか決めていただきます。当院では手術をする場合、しない場合の治療法の他、それぞれのメリット・デメリットをご説明し、じっくりとカウンセリングを行いますので、ご安心ください。
外科手術を行わない場合は、顎はずれたままとなり、矯正治療で歯を傾けることで噛み合わせを調整することとなります。しかし、それでは噛むことで歯にかかる力とそれを受け止める骨の位置関係が悪くなるため、将来的に何らかの影響が生まれることが考えられます。やはり、正しい噛み合わせを長期的に実現させるためには、外科手術が必要だと言えるでしょう。
では、外科手術さえすれば噛み合わせが完璧になるのかというと、そうは言い切れない部分もあります。なぜなら、悪い骨格でも何とか噛めるようになっていた変形した歯列を正しい骨格に合った正しい歯列に変えなければならないからです。そのため、外科手術を受ける場合でも矯正治療が必要となります。 そのほか、噛み合わせには顎関節や筋肉、顎の骨につながる頭蓋骨など、様々な部分が関わっており、それらすべてがよい状態でなくては、完璧というのは難しいためです。
しかしながら、手術を受けることによって確実に現状より格段によい状態にすることはできます。検査とカウンセリングの結果、手術の必要・不要のボーダーラインであると診断された場合でも、しっかりと手術を受けましょう。
手術を行う前には、前もって歯列矯正治療を行います。手術の前に歯並びを整えておくことで、手術後によい噛み合わせの実現が期待できるためです。これを「術前矯正」と言います。
その後、全身麻酔によってお口の中から顎の骨を切り、正しい位置に動かして固定する手術を行います。術後は顎の骨が安定するまで経過を見て、最後の仕上げとして再度の歯列矯正「術後矯正」を行うことで、一連の治療が完了です。
通常の外科矯正では手術までの期間は2年ほどになりますが、当院では長くて6~12ヶ月で終わり、短い場合には診断を行った翌週にと、他院に比べ大変短くなっています。これは治したい部分を早く治すことで、患者様の希望を早く実現するための、当院の取り組みの一つです。とはいえ、手術の時期やトータルの治療期間は、患者様一人ひとりの症状によって異なりますので、詳しくは診察時におたずねください。
手術を行う前には、前もって歯列矯正治療を行います。手術の前に歯並びを整えておくことで、手術後によい噛み合わせの実現が期待できるためです。これを「術前矯正」と言います。
この20年、外科矯正治療においては、手術前の矯正、手術計画、手術手技、手術後の矯正、矯正後の安定性などに関し数多くの知見が得られてきました。 ことに手術前の状態、それに対する手術計画と方法、術後の安定性は私たちにとって常に研究成果に目を光らせていなければなりません。こうしたことはいつも学会や雑誌、インターネットなどから情報を収集しております。 しかしながら患者様は一人ひとり違います。そんな想いをいつも心に留め、初めて臨むような気持ちで対応しなければなりません。
当院では開業当初より外科矯正治療を手がけ、私もそのころに外科矯正手術を自ら受けております。そんな経験もあり外科矯正治療を受ける方々にはできる限りの力を注いで診療にあたっております。
当院の特徴は手術前の矯正治療期間が短いことにあります。一般的には手術前の矯正治療の完了は、手術をした直後には歯を動かさなくてよいところまで、ということになっております。 ところが「ここまで治療するには時間がかかる」「初期の不正咬合をより悪化させる(そのほうが結果がよいのですが)こともある」ことなどのマイナス面があります。
それでも型通り行おうとするのは、手術後の安定性をよくするためといわれております。しかし、私たちは長年そうした掟を守らず、早めに手術に入ることを実践してきました。 それは入院、手術にかけられる時期がかなり限定されている方が多いという現実があったからです。夏休み、ゴールデンウィークなど外科矯正治療のいわゆる"golden time"が存在するのです。 それを優先すると必然的に術前矯正治療を教科書通りに進められないという制限が生まれました。
ところが実際にそれを行ってみると、逆にそのほうが上手くことが進むということに気がつきました。 手術前の矯正が長引くのは、悪い噛み合わせでありながらもその状態で生活しているため、思うように歯が動いてくれないことにあります。 ところが手術をしてしまうと、顎の上下関係が適切になり、かえって早く歯が動いたり、力のかけ方を適切に行えたりすることがわかりました。 安定性に関連することについては、手術時に変化を先取りして手術に工夫を加えることで安全性を担保します。その量については研究発表をすでに行っております。
このような考え方を「サージェリーファースト」と呼びます。サージェリーファーストの考え方は最近学会や専門誌などでも発表が見られるようになり、一つのムーブメントになりつつあります。
ただし、患者様は一人ひとり当然違います。手術後の安定を確保するために行う工夫も、研究成果を取り入れ、なおかつその人その人で変えなければなりません。 そこで、私は手術現場に赴き、手術後の安定を確保するために手術時に外科医と話し合い、また顎を切り離したときの状態から、手術後の矯正治療にはどんな点に注意を払わなければならないかを把握しています。 こうした手順と慎重な観察を通して外科矯正治療が順調に進行するよう、心がけております。
当院では私とスタッフ3名、計4名が外科矯正手術を受けています。 こうした私たち自らの経験と、私だけでなくスタッフ自身も手術現場で助手を務めて手術を熟知しようとすることで、術前のガイダンスから術後のフォローまで、きめ細かいフォローをしようと意思統一を図っています。